東大『障害者のリアルに迫る』ゼミにて、お話しさせていただきました。
ご依頼をいただいた際、「障害者のリアル? 私でいいのかな?」と思いました。
そして、お引き受けして準備をするにあたり、私自身「障害とは何か?」について、考え続けました。
私には様々な属性と、生き難さがあります。
私は、実父からの性虐待のサバイバーで、トラウマを抱え、PTSDによるフラッシュバックが頻繁に起こり、何度も自殺未遂を繰り返しました。しかしその渦中にあるときは、性虐待の被害によるPTSDの症状だと認識できず、「なぜ自分は自分を傷つけずにはいられないのか」「なぜ自分は働くこともできず、寝込んでしまう日が多くて、こんなにも苦しんでいるのか」全く不明で、不明なことがよりいっそう私を苦しめました。
また私はLGBTの中の、レズビアン(女性同性愛者)という属性も持っています。
カミングアウトして受け入れられるかどうか、緊張を強いられることも多かったですし、また、現行の法制度では結婚することができません。(私はカミングアウトして8年が経過し、現在は私自身はおかげさまで同性愛者であるがゆえの困難は、8年前に比べて個人的にずいぶんと減ったと感じています。ですがそれは本当に稀で、幸運なことであって、社会全体には様々な差別や偏見が残っています。私が困難を感じる機会が減ったからと言って、社会的な課題を放置していていいということではないことは、言うまでもありません。)
レズビアンであることも、性虐待のサバイバーであることも、社会的なマイノリティ(少数者・少数派)であり、生き難さがあると思います。
でも、果たして私は「障害者」なのでしょうか?
また私は、診断を受ければ「発達障害」と診断されると思います。
最近、視聴率の高いテレビ番組でも特集が組まれるなどして「発達障害」についての社会的な認知が高まってきました。
私も当事者の方の語りを聞いて「これこれ!」「その通り!」「これは私のことだ!」と合点がいき、自分についてより深く理解して、多少生きやすくなった(困難と折り合いがつけられるようになった)経緯があります。
「発達障害」の特性には、「障害」とついていますから、私は障害者なのかもしれません。
他にも、私は「摂食障害」でしたので、障害者だったのかもしれません。
しかし、性虐待の被害によって、深刻な摂食障害になっていたのですが、今はほとんど問題なく日常生活が送れており、自分を「摂食障害者」だと認識することはありません。
他にも、女性、金沢市出身、左利き、など、私には様々な特徴と属性があります。
そうした前提をお話しして、学生の皆さんと一緒に、「障害とは何か?」について、深く考える時間を持つことができました。
事前に「LGBTとは? というような一般知識ではなく、よりリアルなお話を伺いたい」と言っていただいていたので、通常の講演会よりも、コアなお話になったかもしれません。また、性虐待についても、しっかりとお伝えできたのではないかと思っています。
学生の皆さんとの懇親会にて。
私自身、学びが深まるこのような機会をいただき、本当に感謝しています。
懇親会では、皆さんが今感じている、戸惑いや苦しいことも直接うかがいました。
もちろんすぐに解決できたり、答えが出るようなことでは決してありません。でも、皆さんが、さまざまな背景を抱えながら、このゼミに参加していらっしゃることが伝わってきて、もし今日私がお話ししたことが、何かのヒントになれば、本当に嬉しいと思いました。
今日は授業で私の経験をお話しさせていただきましたが、私もまだまだ発展途上です。(学生の皆さんの年齢の頃、私の年齢(33歳)といえば、すっかりいい大人だと思っていましたが…汗)
今日は皆さんにお会いして、私の方が力をもらったと思います。
この仕事をしていると、そういう瞬間に立ち会えて、それは本当に私の原動力になっています。皆さんありがとうございました!
熊谷晋一郎先生は、授業を的確にまとめてくださり、「障害とは何か」について私からの質問にもお答えいただきました。
熊谷晋一郎先生、本当にありがとうございました。
私の好きな先生のご著書です。
『ひとりで苦しまないための「痛みの哲学」』
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またもしこの記事で、性虐待についてご興味をお持ちいただけましたら、拙著もお読みいただけたら幸いです。
『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』(講談社)
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